痛みの疾患シリーズ ①帯状疱疹

 僕が、ペインクリニシャンとして多くの患者さんの治療してきた病気について学んでいただくシリーズです。教科書っぽくなく、分かりやすく、かつ読むだけで医療者に近い知識を身につけれることを目標としています。
文章力が低く読みにくい部分はどうかご容赦ください汗 常にわかりやすいよう更新していきます。

まず1つ目は「帯状疱疹」です。
どなたでも聞いたことのある病気「帯状疱疹」
当院の集計では、約3~4割程度の方が帯状疱疹の痛みで来院されます。ペインクリニシャンとしては、帯状疱疹の方は、僕が診たい!と思うほど役に立てる可能性と自信があります。

では・・

帯状疱疹とは?原因は?症状は?感染するの?

原因:

帯状疱疹は、水痘ー帯状疱疹ウィルス(以下、VSVと呼ぶ)というウィルスが体の中に潜伏しています。それらは、年月を経て体の免疫が低下してくることをきっかけに、再活性化し起こる病気です。

つまり、元々残っていたウィルスが原因であり、人からうつるものではありません。

しかし、身近な人に帯状疱疹が発症し、水痘にかかっていない人が近くにいた場合、接触感染などで水痘が発症する可能性はあります。その場合、感染対策が必要です(妊婦・新生児など)。
VSVは図のように神経が脊髄から枝分かれしてすぐのところにある「後根神経節(こうこんしんけいせつ)」というところで行動を起こしそこを攻撃します。

発症年齢:

 宮崎県で10年間の帯状疱疹の有名なデータがあります。それによると20歳前後と55歳以上の人に帯状疱疹の発症が多かったと報告されています。
55歳以上の中では、60,70歳代がピークと言われています。20-30歳代など若年の場合は何か病気の既往がなければ、軽症がほとんどで、重症化することはありません。
高齢になるにつれて重症化するリスクがあがってしまいます。また冬に少なく夏に多いなどの季節性も報告されています。

症状:

 原因のところでも記載した後根神経節(上図)というところで攻撃を受けると、その神経が支配している体の部分の皮膚が赤く腫れあがり・水疱や濃泡(液体を含んだぶつぶつ)ができ、さらに強烈な痛みが起こります。皮疹は、体の両側にできることはなく、片側にできます。

 重症の場合は、知覚神経(痛みを感じる神経)だけでなく、運動神経にも攻撃が及び運動麻痺が起こってしまいます。また、顔に発症した場合は目や耳・脳などにも症状が出ることもあります。ダメージをうけた神経は徐々に修復されていきますが、修復過程がうまくいかないと帯状疱疹後神経痛という状態になり痛みが半永久的に残ってしまいます。

 痛み方の特徴としては、初期は皮膚の炎症や神経の炎症による痛みがおきます。時間が経つと神経の集合体を攻撃することによる、強い神経痛が起きます。
重症度により、痛み方に特徴があります(下図)

帯状疱疹のステージ分類

 「帯状疱疹がいつ発症したか?」というのは、僕たちが治療方針や予後を考えていく上で大事な質問の一つです。
まず、3ヵ月未満を急性期、3ヵ月~6ヵ月までを亜急性期、6ヵ月以降を慢性期と呼びます。また病名も変化します。
発症から6ヵ月未満の場合、帯状疱疹関連痛という名前ですが、6ヵ月を過ぎると帯状疱疹後神経痛という名前に変わるのです。これらは、名前が変わるだけではなく、患者さんの治療方針にも大きく左右することになります。

 上図のように、治療の効果と見比べていくと「発症から6ヵ月」というのがキーポイントになります。6ヵ月までは神経ブロックや痛み止めの薬などの効果が見込めますが、6ヵ月以降になると、帯状疱疹後神経痛に変化し、途端に治療に効果が見込めなくなるのです。

帯状疱疹の治療は?

~ウィルスに対して~
発症からすぐの場合、まだ体内に活性化したVSVがいるため、抗ウィルス薬を1週間内服してもらいます。勘違いしがちですが、抗ウィルス薬はウィルスを直接を攻撃するのではなく、ウィルスが増殖するのを抑えるのです。1週間内服したあとは、ほとぼりが冷めるのを待ちます。

~皮膚症状に対して~
水疱などを伴った皮疹の場合、潰れてしまうと2次感染の恐れがあるため皮膚を保護しながら軟膏などを塗布する必要があります。

~痛みに対して~
①内服薬
急性期には皮膚や神経の炎症による痛みが強いため、ロキソニン等の抗炎症薬の働きを持つ薬が効果的です。炎症による痛みがおさまると次は、神経を攻撃されたことによる神経痛が始まります。それに対しては、ガイドラインによって定められている神経痛の薬を内服していくことになります。

②神経ブロック
炎症の痛みはまだしも神経の痛みはかなり強く、仕事が手につかなかったり、夜痛みで目が覚めたり、、と日常生活にかなりのダメージを与えます。それらは内服薬では厳しいため、神経ブロックをつかって痛みを取ります。
効果は絶大で、痛みの原因となる場所に直接、抗炎症薬と痛み止めを注入することで、早期治療・早期鎮痛をはかることができます。

他にも、漢方薬や軟膏やレーザーなどあらゆるものを使って痛みを取り除いていきます。

これでも、痛みがとれなかったら?

これらで痛みが取れない重症な患者さんは、入院をすすめることがあります。
入院での治療は、様々な方法があるのですが、当院では、まず痛みを遮断する硬膜外ブロックという神経ブロックを背中からおこないます。さらに、ブロックをした場所に持続的に痛み止めの薬が流れるようにカテーテルという細い管を挿入します。1日中そのカテーテルから薬液を流すことにより、痛みを取り続けます。
炎症が強く耐えられない痛みの期間を、このカテーテルを挿入することで乗り越えるのです。そのカテーテルを入れながら、神経の回復を促す治療などもおこなっていきます。

まずは、目先の目標は寝れるようになること。。

帯状疱疹ワクチンについて

 今まで話してきましたように非常にやっかいな病気ですが、ここ数年のうちに帯状疱疹ワクチンがでてきました。これは発症率と重症化する確率を下げるといわれています。
2005年のアメリカでの大規模な研究によると、ワクチンによって発症率と重症化率ともに60%以上低下させることができたといわれています。
また、最近になってさらに良いワクチンができました。

こちらは18か国による研究では97%と大幅に低下させることができたと報告されています。また不活化ワクチンであるため、免疫不全の患者さんにも使用することができます。
しかし、費用も高く、副作用も少なからずあるため、医師と相談しながら決める必要があると考えられます。

最後に

今回は帯状疱疹の話を書きました。

外来で多くの帯状疱疹の患者さんを診させてもらっていますが、苦しい病気であることは間違いないです。診察しながらも僕自身も辛くなります。しかし、改善する可能性は非常に高いです。もし、発症したら近くの皮膚科の先生に診てもらうことも大切ですが、ペインクリニックへの受診もぜひ検討してみてください。

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