はじめに
第5回目は僕が痛み治療と共にアプローチしたい病気の1つ・・「骨粗しょう症」にしました。
多くの患者さんが予備軍としてもいるため、是非一緒に勉強しましょう。
腰痛が強く来院された患者さんにレントゲンをとってみると、下図のように圧迫骨折(腰の背骨がつぶれてしまう状態)の方がいます。
圧迫骨折は、痛みがかなり強く生活に支障がでるので、ブロック注射やコルセットをしながら骨がくっつくの待ちます。
問題は、その後です。圧迫骨折が起こったということは、骨量が低下している状態であるので、今後、なるべく脆弱な骨折を起こさないように骨粗鬆所の治療が必要になります。
医師たるもの、疼痛治療だけでなく予防したい!と思ってしまうものです。
そもそも、骨粗しょう症はどんな病気か?
基本的には、皆様の想像通りだと思われますが簡単に言うと骨量が低下(骨の強度が低下)する病気です。
基本的に骨はリモデリング機構によって骨量が維持されています。リモデリングとは下図のように骨を作っては壊すを繰り返す機能のことです。
ゴローの解剖生理学さんの医学生向けの画像にわかりやすいものがありましたので引用させていただきました。下図のように新しくどんどん作りかえていくイメージです。正常の方は均衡が保たれているのですが、骨粗しょう症患者さんでは、骨吸収(骨が壊される)>骨形成(骨を作る)という状態になり、徐々に骨量が減り骨折しやすくなる状態になります。
上図のように、2パターンあります。「骨吸収がすごいパターン」と「骨形成がしょぼすぎるパターン」です。難解になるので省略しますが、どちらにしても結果的に骨量が低下してしまい、骨粗しょう症になるという感じです。
骨粗しょう症になる原因は?
原発性と続発性(他の病気から骨粗しょう症になるパターン)があります。
①原発性骨粗しょう症 ②続発性骨粗しょう症に分かれます
原発性 | 閉経後 男性 特発性(妊娠後など) |
続発性 | 甲状腺・副甲状腺亢進症の方 クッシング症候群の方 胃切除後 ビタミンA、D過剰 ビタミンC欠乏症 ステロイド内服中 骨形成不全 関節リウマチ 腎障害 アルコール依存症 |
その他の疾患 | 悪性腫瘍(ガン)が骨に転移してしまった場合 骨軟化症 多発性骨髄腫 化膿性脊椎炎 |
このようなものが挙げられます。ちょっと難解な名前が多くなっちゃいました(-_-;)
とにかく、骨粗しょう症になってしまった原因が何かを突きとめてあげることが大切になってきます。
こういう人要注意!みたいなのはあるの?
先ほど挙げたように一番注意すべきは、「閉経後の女性」の方だと思います。40歳以上の骨粗しょう症になる確率は、女性19.7%に対して男性3.4%というデータがあります。(J Bone Miner Metab 27: 620-628, 2009)
その他にも、ステロイドを内服している方や小柄でやせ型の方はなりやすいと言われています。遺伝的要因もあることがわかっており、母が低骨密度の場合、娘に70%程度影響があるといわれています。
世界保健機関(WHO)が10年間の脆弱性骨折を起こす確率をだしてくれるソフトを発表しています。「FLAX」というもので誰でもインターネット上でできます。かなり信頼度の高い数値が期待されるようで、日本でも米国でも骨粗しょう症の投薬を始める基準として推奨されている。
こちらで見れるので一度試してみるのもおもしろいかなと思います。
検査はどんなことされるの?
まずレントゲン・骨密度検査を行い、骨折の有無や骨密度を測定します。
さらに血液検査をおこないます。血液検査では、骨粗しょう症を起こすような病気がないかを検索します。他には、骨吸収マーカー・骨形成マーカーというものがあり、それらもみながら骨粗しょう症の病態を判断していきます。
上図は骨密度をはかる機械ですが、痛くもかゆくもありません、大体5-10分程度で検査は終わります。
治療はどういう風にすすめていくの?
検査結果をみながら、別の病気が潜んでいないかを検索し、別の病気が原因の場合はそちらを優先し並行しながら骨粗しょう症の治療していきます。
原発性やステロイド内服による骨粗しょう症などはガイドラインがあるのでそれらを参考に治療を開始していきます。薬はまだ必要でないがいわゆる予備軍にあたる方たちは運動療法・食事療法を指導します。パンフレットなどを使いながら意識改革をすすめます。
骨粗しょう症の薬は、長期間のまないといけない場合が多いため、薬は1日1回のもの、月に1回のもの、半年に1回のもの、注射製剤・内服(錠剤やゼリー)とありとあらゆる形のものが発売されているため患者さんと相談しながら、薬を決めていきます。
一昔前に比べるとかなり治療薬の幅が広がったそうです。今では年に1回という製剤もあります!
驚きですよね。
副作用とかはあるの?
骨粗しょう症の治療薬で1番メジャーな薬である、ビスホスホネート製剤というのがありますが、それは重大な合併症として、「顎骨壊死」というものがあります。もちろん非常に稀ですが、抜歯の際は注意が必要です。薬を中止することによるデメリットもありますので相談が必要です。
その他にも、重大なものとしては「非定型大腿骨骨折」というのがあります。骨粗しょう症の治療中にまさかの脆弱性骨折ではなく骨折してしまう合併症です。発生率は10万人あたり3.2~50例といわれています。(須藤啓広:骨粗鬆症治療.2015; 14(2): 111-5.)
残念ながら確実な予防方法というのはいまだ存在していません。常に念頭に置きながら治療を進めていく必要があります。
他にも電解質異常など挙げだすとキリがないのですが、そこはメリットデメリットを天秤にかけて進めていく必要があります。
最後に
骨粗しょう症の事について書かせてもらいました。骨粗しょう症は診断されていない方を含めると非常に患者さんが多い分野なので、とてもやりがいを感じています。
ただ、患者さんにとっては、薬を飲んでも目に見えて変化があるわけではありません。また長期間のまないといけないため、めんどくさいですし辞めちゃいたくなることもあるかと思います。なんとか、モチベーションを保てるように努力するのも仕事かと思っています。
全ては、「脆弱な骨折をおこさないため・・」 一緒に頑張りましょう!
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